製薬会社の営業マンのすべて

ヘルスケア業界は、高給取りなどのイメージもありますが、社員に優しい業界でもあります。毎年の就職ランキングで人気職種になる理由も納得です。そんな業界に勤める現役MRが包み隠さず発信していきたいと思います。

MSLの過去から今と未来を外資系現役MRが真剣に考えてみる

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現役MRのユウトです。

今日からしっかり働いています!休み中は、旧友とも色んな話ができましたし、仕事初めで気持ちをリフレッシュできましたので、いい感じで今年一年、働けそうです!

ブログの方も昨年10月から始めて、徐々に見て頂いている方も増えてきましたので、MRに興味を持っている方に少しでも情報を提供していければと思っています!(そんな大きな事を言えるような立場ではないんですが、、楽しみながら発信していきます!)

MRの話を就活生や他業界の方と話す機会が時々あります。その時、必ずと言ってイイほど話題として出てくるのが、MSLという仕事です。個人的にも興味を持たれている方が非常に多く感じます。しかしながら、少し間違った認識をされている方もいらっしゃったので、このブログを通して、僕なりの考えをお伝えしたいと思います。

 

【目次】

 

MSLの仕事を考えてみる

MSLとはMedical Science Liaisonの略になります。MSLは自社製品を超えた疾患ベースの情報提供をサイエンティフィックな観点から貢献する部隊です。疾患ベースで話し込むことでドクターのインサイトや今まで考えになかった概念を作り出すことでより強固なパートナーシップを構築し、会社全体のイメージアップに繋げます。

MRと比較して次の点が大きく違います。

  • 適応外の自社製品の情報提供が可能
  • 営業数字はない
  • 講演会は疾患啓発がメイン(サイエンスに基づいた公平な立場で)

これが表向きの仕事内容だと僕は思っています。確かにMSLとして評価されるのはこの部分ですが、製薬会社は営利企業ですのでやはり売り上げに繋がってこないと非常に厳しい見方をされます。

売上を上げるためのMSLの役割として大きく2つあると考えています。

  • 新薬の上市の事前準備
  • ガイドラインを自社製品に有利な形で掲載させる

あくまでも僕、個人の考えです。

新薬に関して、MRは国内で未承認の薬剤の情報提供ができません。そのためMRや本社マーケティングなどが動こうと思っても営業部隊に所属しているため、調査ができない状態になってしまいます。新製品の初動はその後の売上の推移にも非常に重要ですので、事前準備が非常に大切になってきます。そのため、国内未承認の薬剤の情報提供ができるMSLが市場調査や訴求ポイントを調べ上げるわけです。

ガイドラインに関して、想像するのは簡単だと思いますが、自社製品に有利な形であればその情報を適切に提供するだけで処方は期待できます。ガイドラインに載る載らないは処方する際に重要なポイントになってくるのです

 

MSLができた背景と人気が出ている理由

人気のあるMSLですが、僕が入社した10年前は全国に15人程度しかいませんでした。今は増えて会社全体としては100人以上いるんじゃないでしょうか?

なぜこんなにも急速に需要が出てきたのか考えてみたいと思います。

そもそもMSLがこんなにも増えるまでは、MRが全て行っていました。僕も大学病院を担当している時は、どれだけ先生に自主研究をしてもらい、そこに自社製品を絡められるか!これが全てでした。その為には、先生と疾患ベースで話し合わないといけないですし、自社製品の特長もしっかり伝えないといけませんでした。プロトコールと呼ばれる試験デザインも一緒に考えた記憶があります。そこにお金も必要になってくるので、会社に助成金の申請を通すため色々な人に相談しながら、やりくりしていました。

今のMSL以上に動いていた自負があります。

 

しかしながら、今はこんな活動できません。公式的にはMRができる活動範囲が縛られています。そのキッカケが「ディオバン事件」です(きっと山崎豊子先生が生きていれば小説になったんじゃないかと思うくらいのインパクトです)

他の方のサイトで紹介されていますので、ここでは深く触れませんが、医師の自主研究の中に当時のノバルティスファーマ社員が入り、データを改ざんした疑いが出た事件です。まだ裁判中なので結果は分かりませんが、データを触れられる立場にいた事は、自社製品に良い結果に操作した事が疑われても仕方がないと思います。

この事件をキッカケに薬剤の研究に大きく製薬会社が関わっていることが判明しました。当時、この事件については絶対触れるな!と上司から注意を受けました。(きっと自社でも同じような事が行われていたんじゃないかと思います。実際、上記の僕の活動も形になる前にディオバン事件がキッカケで終了しましたが、かなり怪しいです。)

こういった闇の部分が出てきたので、製薬会社の協会がMR活動に縛りを出しました。

しかしながら、医師からの問い合わせに適応外も未承認薬もあります。そこでMSLが必要になってきたという背景があり、徐々に拡大しました。つまりMSLは医師側からの求められた時に出動する部隊として出来上がったのです。MRと違い、仕事は簡単で医師の疑問を解決する、求められる存在なので、人気も出ていったんじゃないかと思っています。

 

MSLの1日のスケジュール

年末によくお世話になっている4年目のMSLの方と話す機会がありました。実際、毎月の活動ってどんな感じと聞くと、2~3人/日は会え!と言われているそうですが、地方担当のMSLは無理だそうです。10人/月くらいが限界と言っていました。

実際、話をした日のスケジュールを聞いてみるとこんな感じでした。

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アポイントが同じ施設であったので、有難かったと言っていました。日によっては県をまたいでアポイントの日もあり、準備と移動がメインとも言っていました。出張は月の半分以上は家には帰らず、ホテル暮らしだそうです。

 

入社4年目の現役MSLの給料と福利厚生を公開

以前MRの給料や福利厚生についてまとめた記事もありますので、是非ご興味のある方は比較して頂ければと思います。

seiyaku-mr.hatenablog.com

MSLの基本給はMRとほぼ同じ扱いです。少しだけベース部分の少なくなっています。その理由として所属先が本社であるため、外勤扱いでなく内勤になっています。営業手当とよばれるものもなく、日当は辛うじて移動手当としてあるそうです。家賃手当も内勤扱いになるので、MRと違って負担がかなり多くなっています。家賃の半分以上は手出だしと言っていました。

給料面ではMRと比べると非常に厳しいのが現状のようです。

 

現役MSLはキャリアアップをどう考えてるんでしょうか?

これまで仕事の内容や給料面について触れてきましたが、どのように感じられるでしょうか?

実際、多くの方が興味をもっていると冒頭でも書かせてもらいましたが、MSLを希望している人は周りのMRでもかなりいます。なんで?と聞くと大体MRより面白そうだからとかMRの将来はないと思うからって答えが返ってきます。

MRも将来はあると僕は思っていますけど、、(苦笑)

seiyaku-mr.hatenablog.com

 

キャリアアップなどを考えてMSLを希望している人が少ないと思います。今の仕事が嫌だからこっちがしたいと聞こえてしまいます。実際、キャリアアップを考えた場合MSLってどうなんでしょうか?

4年目の現役MSLの彼曰く、MR出身のMSLも多く、再びMRに戻る人、別会社のMSLや学術、マーケティングといった様々な部署に異動する人が多いと聞きました。しかしながら、そのままMSLとして同じ会社で管理職になり、上を目指す人は少ないようです。理由は2つあります。

  • 出世に限界がある
  • ポストの数が少ない

出世に限界があるのは最終学歴で最高ポストが決まるからです。営業でいう所長のポスト(一般サラリーマンでは課長)まではいけるのですが、部長などの重役のポストにはなれません。なるためには一定条件の最終学歴が必要との事です。さらに現在、入社してきているMSLの学歴は旧帝国大学の医学部や薬学部の院卒です。これで実力以上の限界が見えてしまい、他部署への移動を希望する人が多いようです。

所長のポストは少ないです。営業は100程度ありますが、MSLは多くても10個です。そのポストを狙って多くの人が狙うわけなので非常に厳しくなってきます。 

ちなみに、彼は今の会社で実績をあげて他の会社に転職することを目標に活動していました。

 

MSLの悩み

そんなキャリアに対しての悩みもあるそうですが、根本的な日々の業務に悩みを持っているようです。先生との面会が1~2回/月程度ですので、仲良くなれないとの事です。本音なのか建て前なのか分からず、面会も言葉を選びながらするので直球で聞けるMRの皆さんのコンタクトが羨ましい!と言っていました。

あとMRのような客観的な評価がないので、評価ポイントが難しいと言っていました。日々の日報を元に上司に評価されるのですが、同席もしていない上司が日報で評価するのも非常に難しいんじゃないかと思います。

 

今後MSLはどうなるんでしょうか

正直外資系企業はこれ以上増やす事はないんじゃないかと思います。しかしながら、MSLの分野では内資系企業は遅れているのでニーズはあると考えています。とあるMSLの所長クラスの人と2人でお食事に行ったときに、転職を考えたけどポストの数が少なく見つからなかった。。。と言っていました。かなり優秀な方でしたので、驚きましたが転職すれば給料も上がりますし、採用する会社からしたら難しいのかもしれません。

 

最後に

いろいろ最後はマイナスな点をあげましたが、それでも長い人生一度はMSLという仕事も体験することはいいんじゃないかと思っています。以前のMRの仕事を体験したことのない人は特に必要なことだと思いますし、大学病院や臨床病院の中身が見えてくるんじゃないかと思っています。

 

【番外編】諸外国の状況

 これは以前の社長に聞いたんですが、MSLとMRの割合が日本は圧倒的にMRが多いのですが、国によってはMSLがメイン、中にはMRがいなくMSLのみで売り上げを立てている国があるそうです。国によって状況は違うそうなのですが、そうもここまで違うと驚いてしまいます